DQX
アドレサンス
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「もう二人とも大きいから、別々の部屋がいいかしらね?」
「そうだね。空いてる部屋ならあるし」

アベルとビアンカは自分の子供たちに提案した。二人はもう14歳だったが、未だに同じベッドで寝ている程仲がよかった。

そうして、双子は今日から別々の部屋で寝ることになったが、レックスは最後にタバサの部屋を訪ねた。そして、少しのつもりがいつまでたっても二人は一緒にいた。

「タバサ、僕そろそろ寝ようかな」

時計の鐘はもう午前零時を指そうとしている。タバサはいやいやと首を振った。

「あと、もうちょっとだけ」

これで何回目かの台詞をタバサは懇願するように言った。レックスはやれやれと微笑した。彼はそんな妹の手を軽く握る。

「もう遅いから、ね」
「……お兄ちゃん、手おっきい」
「え?」

レックスはタバサの言葉に首を傾げた。タバサは兄の掌を広げ、自分の掌と合わせた。

「いつの間にか、私よりずっと大きくなってる」

言われてみれば、とレックスは自分より第一関節位小さく華奢なタバサの手に驚いた。強く握れば、折れてしまいそうだと彼は思った。

「声だって、低くなったし、身体も私より大きくなったわ」
「そりゃ、成長してるからな」
「昔のお兄ちゃんとは全然似てない」
「タバサだって、僕より大きくなってるじゃないか」

え?と怪訝そうな表情のタバサに、レックスは笑いながら、妹の胸の膨らみを指さした。

「もう!お兄ちゃんのエッチ!」

タバサは恥ずかしそうに顔を赤らめ怒った。そんな妹を見てレックスはおかしそうに笑った。しかしタバサは急に真顔になり、兄を見つめた。

「お兄ちゃん」
「ん?」
「髪、撫でてくれない?」

タバサのいきなりの願いにレックスは少し驚いた。

「お願い。そしたら私、ぐっすり眠れるの……」

レックスは戸惑いながらも了解すると、二人でベッドに横になり、タバサの髪を撫でてやった。

「タバサ、お化けが怖いの?」
「えっ?」
「お化けが怖いから、僕にいてほしいんだろ?」
「ち、違うもん。お化けなんて、いないわよ」

レックスのからかいにタバサは少したじろいた。兄は妹の手入れの届いた髪を撫でながら笑った。

「お父さんとお母さんは小さい頃見たことあるって」
「もうお兄ちゃん、怖い話はやめてよー」
「ふふ、子供だねタバサは」

そして、とりとめのない話を少しの間していた。父と母の知らない秘密の時間。今日で最後かもしれないが。
いつの間にかタバサは寝息をたてていた。レックスは彼女にタオルケットをかけた。
その瞬間、レックスは何かの止め具が壊れたように目を見開いた。すやすやと可愛い寝息をたてるタバサを見つめ、彼は彼女に顔を近づけた。

「……タバサ、寝てるの」

返事はない。レックスは寂しげに笑うと、絡めたタバサの指に、軽く口づけた。

「お休み、僕の可愛い妹」
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