DQX
僕の憂鬱
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君は今何を見ているんだい。その汚れのない澄んだ瞳で何を見ている?

ービアンカ、僕の大事な大事なビアンカ。

出来ることなら君を僕だけのものにして、永遠に抱きしめて、束縛しておきたいんだ。

だけど、それはできない望み。だから僕は君への狂っていまいそうなほどの愛しい感情を押し殺して、毎日を過ごしている。

だから僕は怖いんだ。いつか君への愛が爆発してしまいそうで。それを妨げるもの全てをこの手にかけてしまいそうで。

それでは君が喜ばないことを知っている。だけど、だけど僕は、自信がない。

君を幸せにできるかどうかが。君を悲しませずにすむかが。僕のエゴイズムで君を傷つけてしまわないかが。

たまらなく、不安なんだ。

僕の心は、あの日、奴隷になってから、すっかり汚れ腐ってしまった。汚いことを沢山目にした。酷い目に沢山あった。

僕の意志は、ちっぽけで、弱くて、汚れてしまった。

だけど、君だけがそんな僕を清めてくれるような気がした。君は、僕とは反対に、汚れを知らない無垢な人なんだろう。

それを、僕は汚すのだろかうか。

……それでもいい。君が、僕のものになれば、それでいい。


「どうしたの、アベル?」
「えっ……」
「さっきからボーっとしちゃって、考えごと?」

その尋ねにいや、と僕はかぶりを振る。
ここはネッドの宿屋。明日は僕の故郷であるグランバニアへ向かうため、山を越えていかなければならないのだった。
僕の最愛のビアンカは、怪訝そうに僕の顔をのぞき込む。僕は、彼女を独占したいという自分の卑しい心が見抜かれそうで、顔を背ける。ビアンカはそんな僕の手をそっと握って優しく僕に話しかける。

「ねぇ、アベル」
「ん?」
「私ね……」
「何だい?」

ビアンカは黙って俯く。僕は彼女の言いたい事がわからなくて首を傾げる。

「……ううん、やっぱり何でもないわ」
「変なの。どうしたんだよ」
「いいのいいの。愛してるわ、アベル」

そう言ってビアンカは僕の頬にキスをした。僕は、僕もだと頷いて、今度は彼女の唇に口づけた。
ー僕の烙印を君に捺したくて。僕はむさぼるようにビアンカにキスをした。そしてそのままベッドに向かおうとする。

「あっ……ダメ」
「え?」
「今日は、ダメなの」

ベッドに押し倒されたビアンカはかぶりを振った。僕は残念だったが彼女の体から手を離した。
今日は気分じゃないのかな、と思った。ビアンカは自分の細く華奢な指を僕の唇に軽く当てる。

「うふふ、明日は大変なんだから、体力は温存しなきゃ。アベルったら、いつも激しいんだから」

ビアンカの言うとおり、明日に向けて体力を温存しておいた方がいいのかもしれない。僕は無理矢理納得して、不満な心を抑えた。


その時、何故ビアンカが僕を拒んだのかは、グランバニアに着いてから分かるのだった。
僕と彼女の間に子供ができていたーその事実に僕は狂喜しそうになった。だが、それはもう少し後の話。

いつか、君は僕のー
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