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煉獄島の暇潰し
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 煉獄島。そこに閉じ込められたエイトたち四人とニノ大司教は、表情を暗くしてそれぞれに、座り込んだりうろうろしたり、考え込んだりしていた。
「もう死ぬまでここから出れないのかな」
「そんな事はないでがす。きっと、ここから逃れられる術があるはずだ」
 弱気になっているゼシカを、ヤンガスが慰めた。牢獄の端の方では、ククールが神妙な顔付きで俯いていた。ニノ大司教はまだ寝ていた。この牢獄には、数人の囚人が閉じ込められていた。本当に彼らが悪いことをしたのかどうかは図りかねるものだが。
「あ、おはようエイト。よく眠れた?」
 そこで、エイトがむっくりと起き上がった。隣にいたゼシカがそう声を掛けた。まあね、とエイトは曖昧な返事をした。ゼシカは寂しげに微笑んでかぶりを振った。
「私は全然だめ。考え事ばっかりしちゃって」
「……そういうときは」
「え?」
 ゼシカは怪訝そうにエイトを見た。彼はにやりと笑うと言った。
「そういうときは、遊んで忘れるのが一番さ。ゼシカ、ククールとニノ大司教も集めてゲームをしようよ。自由参加でいいけど」
「ゲーム?何言ってるのよ。やろうにしても何をするのよ」
 エイトの突然の提案にゼシカは唖然としつつ言った。エイトは堂々と言う。
「双六さ」
「双六ぅ?」
「コマは、地面にかいて皆で自由に作る。さいころは……ひのきの棒にでも目を書こうか」
 エイトの発言に、ゼシカは呆然とするばかりだった。エイトは思い切り伸びをした。
「暗く考えてばかりじゃさ、気が重くなるだろ。気分転換が必要だよね、こんなときは。だから、やろうよ。皆で双六」
「面白そうでがすね!」
 そこでヤンガスが入ってきた。だろ、とエイトは頷いた。ゼシカは戸惑いもあったが、エイトの言う事ももっともなので、何となく賛成した。
「じゃ、二人を誘ってみるわね」
 ゼシカは皆を誘いにいった。エイトはよいしょと腰をあげると、懐にあった短剣で何かを地面に書き始めた。ヤンガスはぽんと手を叩いた。
「双六のます目でがすね!アッシも何かかいていいでがすか?」
「うん、勿論。でもちょっと待って、枠、先にかいちゃうから」
 エイトが黙々とマスの枠をかいていると、ゼシカがククールとニノ大司教を連れてやってきた。ククールは頭を掻きながら苦笑いして言った。
「何だよ、エイト。寝ぼけてるのか?呑気なヤツだなー」
「こんなときに双六なんかやっておれるか!」
 ニノ大司教は憤慨交じりに言った。エイトは枠をかきおえるとぱんぱんと手を払った。
「まあまあ。こんな時にこそ、ですよ。遊んで嫌な事は忘れようー!」
 エイトは楽しそうに言った。ククールはヤンガスとゼシカに耳打ちした。
「エイトって、こんなキャラだっけ?」
「うーん……こんな一面も、兄貴にだってあるんでがすよ」
「ま、エイトの言う事、間違ってないし、一度やってみましょうよ」
「そうこなくっちゃ」
 エイトは、その辺に落ちていた木の棒を拾って三人に手渡した。そして、自分でかいた枠を指差して言った。
「ここに、好きなマスを書いてよ。一回休みとか、イベントとか、ワープとか。ご自由に」
「了解ー」
 三人は思い思いにマスを加え始めた。エイトはちらりとニノ大司教に目をやった。
「やりますか?」
「私は……とりあえず見てる」
 そうですか、と頷くと、エイトもマスを書き始めた。そして、十分くらい経つと、双六が完成した。
「できたがすー」
「こんだけで結構疲れるぜ。腰いてぇ」
「さ、始めましょうよエイト」
 エイトは一から六までの数字を振ったひのきの棒を出した。そして、四人はじゃんけんをして、順番を決めた。順番に、ヤンガス、ククール、ゼシカ、エイトとなった。そこでククールが言った。
「ビリのヤツ罰ゲームにしようぜ」
 その意見に異議を唱える者はいなかった。そして、戦いのゴングは打ち鳴らされた。
「よーし、気合入れるでがす!」
 ヤンガスは思いっきりさいころ代わりのひのきの棒を地面に叩きつけた。壊れなかったのが不思議だったが、出た目は4だった。彼は駒代わりの石ころを動かした。
「まあ、幸先はよさそうでがすね。えーっと、マスの指令は……一回休みぃ!?」
「あっはっは、残念だったな。次は俺か」
 落ち込むヤンガスの肩を叩き、ククールが指を鳴らした。華麗にひのきの棒を投げると(どうやって?)それを覗き込んだ。そしてにやりと笑った。
「ふ、6か。ついてるな。えーと、腹が一杯で動けず、一回休みだとぉ?」
 ククールは即座にヤンガスを見た。ヤンガスは思いっきり首を縦に振った。
「アッシの罠に引っかかったな!」
「くっそー!」
 ククールは悔しそうに舌を鳴らした。
「次は私ね」
 ゼシカも同じくひのきの棒を転がした。出た目は5。
「えーっと、テンション溜めて、三マス進む。やったあ」
 ゼシカは自分の駒をさらに進めた。そして、棒をエイトに渡した。エイトは軽くそれを転がした。出た目は、1。
「1かあ。……ん?美女に囲まれご満悦。10マス進む」
「チッ、やられたか」
 ククールが言った。彼が書いたマスなのだろう。エイトは戸惑いながらも駒をさらに10マス進めた。ゼシカはククールに冷笑を浴びせながら、再びひのきの棒を握った。
「ヤンガスとククールは一回休みだから、また私ね」
 ゼシカが棒を転がし目を見ると、4だった。駒を進ませると、ゼシカは驚愕した。
「パーティーが全滅、振り出しに戻るですってぇ!?」
「まあそう落ち込むなハニー。そういうときもあるさ」
 ククールがゼシカの肩に手を置いた。ゼシカは忌々しそうにその手を振り払った。
「ふん、見てなさいよ。私の挽回劇を」
 その間に、エイトが駒を進めていた。出た目は5。イベントは珍しく無かった。次のヤンガスが彼から棒を受け取った。
「やっとアッシでがすか。コロコロ……えーっと、3?浮気がばれて、修羅場になる、4マス戻る。だぁーっ!」
 ヤンガスがまたも悔しそうに叫んだ。そのマスをかいた張本人のククールはヤンガスから棒を奪い取った。
「俺だな。……2?えー、Mハゲに二階からイヤミ、どこでもイヤミ。心が折れ、一回休み。ノーオッ!!」
 ククールは頭を抱えた。
「リアル(現実)でもそうでがすからね」
「悲しいわ……っと、私か。よーし、挽回するわよー!」
 ゼシカは棒を投げた。手を合わせながら目を見ると、6だった。
「よし……ん?ゼシカのおっぱいで戦闘不能。10回休み?」
 ククール、と彼女は彼を思い切り睨んだ。ククールは慌ててかぶりを振った。
「お、俺じゃないって!」
「……アンタしかいないでしょ、こんなの」
「マジで俺じゃないっつーの、おい、エイトかヤンガスだろ!誤解だって!」
「メラゾーマぁ!!」
「うわああああー」
 ククールはしんでしまった!
「放っときましょう。最後にザオリク唱えればいいわ。罰ゲームはアイツよ。続けましょう。誰が負けても罰ゲームはアイツだから」
 ゼシカのあまりの威圧に、エイトとヤンガスは頷くしかなかった。

 そして、穏やかな双六は終わった。結果は、最後のもつれ込みにエイトが勝って、ゼシカ、ヤンガスの順だった。エイトは棺おけに入っていたククールを蘇生させた。ゼシカが恐ろしい表情で手をぱちぱちと叩いた。
「じゃ、罰ゲーム。ククール、ヤンガスのぱふぱふの刑ー」
「ええっ!?」
「か、勘弁してほしいでがす!」
 ゼシカは無言で嫌がる二人を睨みつけた。嫌とは言えず、結局……

 ―大変お見苦しい光景なので、しばらくお待ちください―

「全く、この変態バカリスマめ!ヤンガス、協力ありがとー」
「う……ひどいでがすー」
「ホント俺じゃねーよぉ!」
 涙ながらに訴えるククールを無視して、ゼシカはそっぽを向いた。ククールは満身創痍の身体で項垂れた。
「マジ信じてくれよ……」

「本当はあなたなんでしょ?」
「な、何を言うか!」
 ニノ大司教がエイトの問いかけに焦り交じりで怒った。
「別に告げ口する必要はありませんよ。そんなことしたら、あなたはゼシカに殺されますからね」
 怖い事を言いながらにこにことエイトは笑っている。ニノ大司教は半ば恐ろしくなり、告白した。
「そうだ、私だよ。つい、出来心だったんだ……」
「わかってますよ。誰もあなたを責められない」
 エイトは微笑みながら言った。その代わり、という補足を付け加えて。
「その代わり、ここから抜け出す作戦の犠牲者は、あなたにやってもらいますから……」
 ニノ大司教は、ぞっと鳥肌が立つのを感じた。エイトはおかしそうに笑って頭をゆるりと横に振った。
「冗談ですよ。あはは」

 彼の言葉は、その後真実となってしまうのだった。真の罰ゲームは、ニノ大司教に下された……。
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